文化財、宗教の意味、クーデター、ポルポトのような虐殺、閉ざされた世界、格差などのさまざまな問題を包括して描いた大作。
読後、実に美しい小説だと思いました。私には登場人物の誰もの有様が美しく、またそれを捉える著者の筆致も美しいです。同じようなテーマをことさら陰惨に描いたり、何らかの答えをあえて持つように描くほうが私には簡単に思えます。
しかし、筆者はどちらにも安易には与せず、まるで「誰もが少し違う道を行けば出会う」、「人生で当たり前」のことのように描き、人生やら何やらは「答えのないことこそが答え」というのを暗に提示しているようで、あがく人間の美しさを描写した,実に美しい小説だな、と思いました。
個人的に、登場人物では主人公の奥様が考え方も含めて大好きです。

